シンポジウム『中東の今と日本』

今日は東京で開かれたシンポジウム『中東の今と日本 私たちに何ができるか』に行って来た。

きっかけはいろいろある。
今期の授業でとっている『History of Muslim-Christian Relations』で歴史からイスラム教について勉強し始めこの分野に対する関心が爆発した(今まで知らなかった分)。続けて『Food Culture in the World』でイスラム圏の文化を別視点(日常生活)から眺めて揺るぎない興味となる。そんなところに、今秋に聴講している『寺島文庫リレー塾』で東京外語大の教授がパレスチナイラクの現状を解説して下さる回があった。そのときに配布されたのが今回のシンポジウムのチラシだ。

もともと宗教やそれに付随した芸術に関心を抱きやすい性質であったが、これを機に苦手な社会学にも目を向けてみようと思ったのである。

さて、今回のシンポジウムは『中東カフェ』という研究プロジェクト主催の報告会で、大学教授や研究機関の調査員,外務省の職員など、現役でこの地域の研究をされている方々がパネリストとして登場した。

                                                                                    • -

時間は11時から18時まで。非常に濃い内容でこのボリューム。
全ては把握できていません、という状態だった、私がね。

しかし、今回私なりに“注目したい(知りたい)事柄”というのが既にあったので、とりあえずそこだけは取り損ねないよう注意した。

                                                                                    • -

□第一部のテーマは<アフガニスタン情勢>
3人のパネリストからの報告があったが、そのうちお2人が発表していた〔アフガニスタン内の政治主導側と武装勢力側の対立〕,また〔他国の介入が注意すべき“匙加減”〕の話は、私には予備知識があまりに無さ過ぎてほとんど理解できなかった。ノートにはキャッチした情報全てを書き込んだが、とてもこんなところに要約なんて無理である。

最後の一人が取り上げていたのは『ジハードと殉教』のテーマだった。

この“ジハード”と“殉教”という言葉は本屋でもこの2語の関連性を示すタイトルが多く並んでいる。これまで私が読んできた本にも上記の関連性を“有”または“無”といった二者択一的な解答をしている本が多かった。しかし、ムスリムは今や世界の4分の1の人口を占める。クルアーンやスンナ(ムハンマドの言行)の解釈,そこからなされる宗教行為は人それぞれであり、一概に「ムスリムの考え方はこうである」と定めるのは不可能であると思う。

自殺を禁じているイスラームが殉教を認めるか否か、という問いは特にデリケートなものである。そのため、私自身、もうちょっと基本的な知識を身に付けてから…と、正直文献調査があまり進んでいない領域である。が、非常に関心を持っているテーマだったので、発表された事実と多くの要素に驚き、また見方が変った。

研究者によるこのテーマへの鋭い分析に、多くを学ぶことができたが、ここもやはりまだ自分の言葉でまとめられないので、この辺で切り上げたい。

--------------------------------------------

□第二部は<石油産出国とどうつきあうか>
という題だったので、「経済はムリ」という苦手意識から“しばしの頭の休息時間”と定めていたが、実はここが一番私の関心を刺激した部分だった。なぜなら、トピックが“石油”だけではなかったからだ。3人のうち2人のパネリストの発表は主に題の後半の日本がこの地域とどう“つきあうか”の部分に主眼が置かれていた。

 ①サウジアラビアの近代化
イスラームとの関係が特に強いサウジアラビアも石油による経済力の急上昇により、近代化が著しく進んでいる。その象徴がメッカのカアバ神殿のすぐ後ろに聳え立つ『メッカ・ロイヤルクロックタワー』である。およそ1400年に渡り多くの巡礼者を迎えてきた聖なる地の変容に一番驚いているのがムスリム自身なのだそうだ。一方で、Wikipediaには、巡礼者にとっては宿泊の場所がこれまで悩みの種だったため、このビルの完成は悲願ともいえる、と分析されている。

 ②日本への関心I
近年、サウジアラビアとイランでは日本文化に対する関心が高まってきている。特に、サウジアラビアではラマダーン断食月)の間だけ放送される一日5分×約30日の番組で2年ほど前一ヶ月『日本特集』が組まれ、多くのサウジアラビア人が日本文化に興味をもったそうだ。その影響あって、来年の2月に行われる“万博”のようなサウジアラビアの祭典『ジャナドゥリア祭』で唯一のゲスト国として日本が招待された。そこで日本文化紹介のパビリオンを開くことになるのだが、一つ要求があってマンガ・アニメのコーナーを含めるように、とのことらしい。遠い気がしていたサウジアラビア、多くの習慣が異なる彼らも日本のマンガ・アニメを好きなのだと知ってとても嬉しかった。

 ③日本への関心II
続いて、同じくサウジアラビアから今度は日本の教育への評価が高まっている、という発表がなされた。それは、現地の日本人学校が行っている生徒自身が行う“教室掃除”の制度にサウジアラビアの政治家?高官?教育者?(名前及び役職失念…)が関心を持ち、ぜひ日本式の教育をとの希望からサウジアラビア人の子どもの受け入れを試み始めたそうだ。サウジアラビア人の富豪の家の子どもは学校に通う際、一人一台車が与えられていて(運転手は外国人)それで通学しているそうだが、日本人学校はそこへの入学者にスクールバスの使用を義務化している。子どもたちはまた、スクールバスの運転手に毎朝挨拶するよう言われている。そんな取り組みあって、家でも親やお手伝いさんへ挨拶する習慣がそなえられる日本人学校は、団体行動が身につくといった効果もあって、保護者たちからの評価も上々らしい。「人にもモノにも礼を尽くす日本人の心」が理解さていることに驚きとやはり喜びを感じた。