国立西洋美術館のローマ展&常設展

今日は上野の国立西洋美術館で開催中の展覧会『古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―』を観に行ってきました。

この展覧会には彫刻からフレスコ画,食器まで古代ローマ人の生活を垣間見ることができる品々が展示され、非常に興味深かったです。

『皇帝座像(アウグストゥス)』はものすごく迫力がありました。
全長215m!! 見上げるよな高さ!!!
威厳に満ちた表情と逞しい肉体!筋肉だけでなく腕には血管が浮き出ているところまで確認できました。そして、身にまとわれた布の表現がまたなんとも繊細で驚きました!襞の一つ一つが丁寧に掘り込まれていて、素材が石であることを忘れるほど。。
後ろの壁に映った影も迫力がありました。


展覧会を観終わった後はそのまま常設展へ。常設展を見るのはルーヴル美術館展以来。そのとき改修中だった奥の部屋(印象派などの部屋)が閲覧できるようになっていました。

ルノワール Pierre-Auguste Renoir (1841-1919)の『アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)』は19世紀にヨーロッパで起こったオリエンタリスムの影響を受けて描かれたものと思われます。愛らしく穏やかな表情の少女を描くのが得意なルノワールにオリエンタル風の女性を描かせると、眉が妙に濃い、目の釣りあがった鋭い表情になります。
日本の漫画とかでの、日本人と西洋人の描き分けを見ると西洋人の鼻が大きく、目の瞳が点になりますが、それに近いかも。

オリエンタリズム』“Orientalism”とは19世紀あたりにヨーロッパでおこった東洋主義(趣味)のこと。
オリエントとは‘太陽が昇る地=東’を意味し、西洋人には神秘的なイメージをもたれています。Orientの日本語訳は「東洋」。地理的には“中東”を表す語のようですが、19世紀のヨーロッパにとってはそこに中国や日本などの東アジアも盛り込まれていたのだそうです。Olientalismという言葉・概念は西洋文化を中心としてみたときの他者としての存在。

オリエンタリスムについては、この前大学の授業で学んだばかりですが、そのときのスライドにもドラクロワ Eugène Delacroix (1798-1863)の『アルジェの女たち』"he Women of Algiers"が登場していました。

この時代の作品で東洋趣味の作風といえば、やはりアングル Jean Auguste Dominique Ingres (1780-1867)の『オダリスク』も外せませんね。
未だに“オダリスク”と“オベリスク”、どっちがどっちかごっちゃになってしまう私、、困ったもんだ!!

東洋主義の影響はこの時代に創られた芸術品にのみ現れるものではありません。
私は、パリのルーヴル美術館の“エジプト部門”もこのオリエンタリスムの産物である気がしてなりません。

ナポレオン軍がエジプトへの遠征の際に発見し持ち帰ったロゼッタ・ストーン。
そのときナポレオンと共にエジプトに赴き、ロゼッタ・ストーン(現在はロンドンの大英博物館が所蔵)を解読したシャンポリオン Jean-François Champollion (1790-1832)がルーヴル美術館 “エジプト部門”の初代館長(“館長”じゃないよね、、なんて言えばいいんだ…?)だったことからも、この分野に力を入れ始めたのが19世紀辺りであるということがうかがえます。


それと、今年加わった新所蔵作品の中にハンマースホイ Vilhelm Hammershøi (1864-1916)の作品が一点(『ピアノを弾く妻イーダのいる室内』)。嬉しい!!ハンマースホイは去年の大回顧展で出会って以来、作品の放つ不思議な空間に引き込まれています。


企画展だけでなく常設展のほうも久々にたくさん観れて面白かったです。