悲恋の主人公ジュリをよむ

フラゴナール Jean-Honoré Fragonard (1732-1806)-“The Souvenir”
           

この絵に出会ったのは、今年の夏、ウォーレス・コレクションで。はじめは主題(何の場面か,モデルは誰か)など全くわからなかったのですが、ロココ美術のテーマとして貴族の恋愛を描いたものが多いので、これもなんとなく「少女が恋する男性の名前でも木に彫り込んでいるのかな…」、、などと感じてはいました。しかし、他の多くの作品に見るような"甘美"な世界が全面に描かれているのではなく、どこかメランコリックな雰囲気が漂っていて、美しいだけでなく、とても気になる作品でした(もちろんポストカードもゲット!机上に飾っています♪)。帰ってから教授に提出する美術鑑賞レポートの情報収集のためにこの絵について調べていると、この少女は‘Rousseau’s heroine, Julie’、つまり『新(=ヌーベル)エロイーズ』の主人公、貴族の娘・ジュリであるということがわかったのです!
ルソー Jean-Jacques Rousseau (1712-1778)の『ヌーベル・エロイーズ』といえば、『ベルサイユのばら』ですね!!
『新エロイーズ』は2人の恋人ジュリと家庭教師サン=プルーの手紙のやりとりによって話が進められる恋愛小説です。岩波文庫(安士訳版,’60)のあとがきによると、「フランスでも、今日ではこれを読む者は学者以外に、一般はあまりいないそう」ですが、18世紀後半,19世紀初頭には大変流行し多くの読者を感動させたようで、漫画『ベルサイユのばら』の中でも(漫画を知らない方用に身分をば載せておきます)、小説の話をふっかけたジェローデル(貴族で近衛兵の少佐)はもちろん、アンドレ(平民),オスカル(貴族),アラン(貴族だが貧困にあえぐフランス衛兵)までもが読んでいる有名な作品なわけです。その物語に対する感想は、それぞれが抱える状況によって全く異なるというのも興味深い!!

ここまで読んでいただいて、「なんのこっちゃ??」という方はぜひベルばらをお読みください。私の拙い日本語では、残念ながら伝わりません(; ;)有名でありすぎるがゆえに、オマージュと同じぐらいパロディーも多く、題名とキャラ名しかご存知ない方にはなかなか作品の壮大さは理解されていない気がします。私も実際読むまでそうでしたので(^^;)この漫画を知らずに人生を終えるのはあまりに勿体無いです!日本人に生まれた特権(日本で暮らす特権)は、①美味しい鮮魚を食べ、②ゆっくりとお風呂につかり,③素晴らしい漫画の数々を読めることだと思っています。
まぁ、私の人生観はどうでもいいんですけどね。


話を元に戻すと、、(^^;)(話題飛びすぎ!)
つまり、最初に紹介した頬を紅く染めた愛らしい少女は両思いになれないということ。
その結末を知っているからこそ、見る者は恋に身を焦がす彼女に甚く同情してしまうのかもしれません。